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2014年1月28日火曜日

『エッジ』 鈴木光司


中学の時、ホラー好きの友達に『リング』のドラマ版を薦められました。
もしかしたら知らない人もいるかもしれませんが、『リング』が最初に映像化されたのは映画じゃなくドラマだったんです。
調べたらリングのドラマ版は1995年の放映。なんと20年近くも前!
たぶん今見ても色あせない怖さと面白さだと思うのですが、残念ながらDVD化はされていないようです。
私が見た当時は、今は懐かしいビデオテープ版でした。
私はホラーは好きじゃなかったのですが、友達にどーしてもと言われて見てみれば、本当に面白い。
怖さより面白さが勝った初めてのホラーでした。
その後原作が小説であることを知ったことがきっかけに、鈴木光司さんの小説と出会い夢中になって読んだ中学生時代。
それから十数年の時を経て、鈴木光司さんの小説を久しぶりに読みました。


『エッジ』

人が消えてゆく―長野、新潟、カリフォルニアで、人々が突如“消失”する怪現象が起こった。そんな中、フリーライターの栗山冴子は、ある一家が忽然と姿を 消した“一家失踪事件”の謎を追い始める。18年前に父が、やはり消失ともいえる突然の失踪で行方不明となっている冴子は、一連の事件の中に、人類が経験 したことのない未曾有の世界的異変を嗅ぎとるが…!?世界の基盤を揺るがす恐怖を描く、サスペンス・ホラーの傑作。

Amazon.co.jp 商品の説明より

ちなみに本書、日本人で初のShirley Jackson Awardを2012年に受賞してます。
サスペンス・ホラーと言うよりは、SF小説・・・むしろ科学哲学書(ホラー風味?)という新しい分野を開拓した気がするこの作品。
数学や量子物理学で世界の仕組みを描きつつ、世界には数字や科学だけでは表せない人間の愛や神秘の領域があることが示唆されている気がしました。
とりあえず、『リング』のようなホラーを期待して読むとがっかりしますが、私にとっては下手なホラーより怖かったです。
この本を読んでいる間、明日も当たり前に続くと信じていた日常が足元から揺らいでいくような感覚に襲われ、不安な気持ちに。
相変わらず、鈴木光司さんの本は読者を『不安』にさせるのが上手いなぁと思います。

科学哲学書なだけあって、作中でかなり専門的な話が飛び交うのですが、理系分野が大不得意な私でも何とか理解できました。
ガリレオ・ガリレイの有名な言葉に 「数学は神が創造した世界を設計するために用いた言語である。」というのがありますが、私、かなり数学が嫌いでですね・・・
微分積分が出てきたあたりで、「こんなの絶対将来使わないし役に立たない!」と数学を捨てて文系で生きる決意をした過去があります。
「数学は世界を表現する言語」であるということをこの本で再認識させられたのですが、今更あんな風に数学を毛嫌いしていたことをちょっと後悔。
もともと、私が英語を本格的にやり始めたのは、色々な国の人と話してみたかったと言う理由から。
自分の知らない世界を知りたい、世界には私の知らないことがいっぱいあるはず。
それには手っ取り早く世界共通言語の英語だ!と当時高校生だった私は思ったわけですが、『エッジ』を読んで思うのは数学だって世界の共通言語なんですよね。

と言うわけで、私は数学や量子物理学に関しては素人以下。
逆に、それぞれの分野に詳しい人が本書を読んだらどういう感想を持たれるのかかなり興味あったのですが、アマゾンに量子力学や相対性理論を学んだ方が書評されていて興味深かったので引用させていただきます。

ホラー小説という形式の科学書
By M☆ism

ハードカバー版上巻の表紙にはこう記されています。

「本書で、長年解き明かしたいと願い続けた世界の仕組みについてのいくつかのヒントを提示できたのではないかと自負している」

私はこの本はホラー小説という表現方法をとった「科学書」だと思っています。
世界の仕組みについて著者の考えをまとめた「科学書」だと。

世界の仕組みを表現する方法はいくつかあると思います。
数学・物理屋さんなら数式で、哲学者なら哲学的な言葉で表現することでしょう。

本書の著者鈴木光司氏は作家なのでホラー小説という表現方法で世界の仕組みを描き出したのだと思います。

宇宙とは何か?
生命とは何か?
人間とは何か?

という問いをもって本書を読めばさらに著者の伝えたいことがわかっていくのではないでしょうか?

ちなみに個人的なことですが、
私は物理専攻の大学院卒で、量子力学や相対性理論を学んだ側(冴子側?)の人間です。
著者と同じように普段から世界の仕組みについてあれこれ考察しています。
だから、非常に本作品には刺激を受けました。
特に、「ホラー小説」という形式で世界の仕組みを表現する方法があるのかと。

宇宙や生命についてはいくら考えても不思議なものですね。

実はアマゾンの書評はかなりの酷評が多かったのですが、翻訳された英語版が販売されているAmazon USでの書評はまぁまぁ。
まぁまぁと言うか、英語版でもやはり絶賛する人と酷評する人に二分されてますね。
好き嫌いが分かれる作品のようです。
是非、英語版を夫のVさんに読んでもらって感想を聞きたいものです。
と言うのも、一生懸命言葉でこの本の怖さを説明しようと思ったのですが、さっぱりわかってもらえなかったので。

最後に哲学者ウィトゲンシュタインの名言を引用・・・

"世界がどうあるか、が不思議なのではない。
世界がある、ということが不思議なのだ。"

2013年10月22日火曜日

『そろそろ旅に』 松井 今朝子著

日本の本が読みたいという私のリクエストに妹が日本から持って来てくれた本です。
十返舎一九とか渋い本読むなぁ、と恐る恐る読み始めてみたらこれが意外に面白い。
自分では絶対に選ばない本だったと思うので、妹の幅広い読書範囲と膨大な読書量には脱帽。


『東海道中膝栗毛』で一世を風靡するのはまだ先のこと。若き日の十返舎一九、与七郎は平穏な暮らしに満たされず、憑かれたように旅を繰り返す。駿府から大坂、そして江戸へ。稀代のユーモア作家が心に抱いた暗闇とは何だったのか。意外な結末が深い感動を呼ぶ、直木賞作家渾身の長編小説。
                                       Amazon.co.jp 商品の説明より


十返舎一九の名前と代表作『東海道中膝栗毛』は、日本史の教科書を通じて学んだことだけはうっすら記憶にあります。
その十返舎一九の青年期から壮年期を描いたのがこの作品。
私が面白いと思ったポイントを以下にまとめてみました。

1.        歴史に人あり、人に歴史あり
分厚い歴史の教科書の中のたった1,2行の表記されているだけの十返舎一九。
たった1、2行の裏には、これだけのドラマがあるのだと思うと気が遠くなります。
日本史の授業もただひたすら暗記するんじゃなくて、こういうドラマがあったことも教えてもらえるともっと面白くなると思うけど・・・まぁ、そんなこと教えてたらキリがないんでしょうけど、こういう部分が歴史の面白さだと思うんですよね。

2. 江戸時代の距離感覚
静岡から東京の距離、この本の中で言う駿府から江戸の距離は、今ではたった数時間で移動できてしまいますが、当時は何日もかかる旅でした。
当時の人にとっては、たったこれだけの距離も今の海外旅行なみの感慨を持っていたのがこの本から伺い知れます。
私の祖母は昭和生まれですが、それでも東京に対してまるで外国のような感覚を持っている人です。若い頃東京から疎開してきた男性と恋に落ちたのですが、家族から大反対を受け泣く泣く諦めた・・・というドラマチックな恋愛をしている祖母。反対された理由が「東京になんて娘をやれない」という理由だったよう。
それから50年以上の時が経って、彼女の孫娘(つまり私)は海外で外国人と結婚。
時代の流れを感じます・・・って、本の内容からはずれちゃいましたね。

3.人生は旅
というわけで、この時代ほとんどの人が生まれた町で育ち、暮らし、そこで死んでいくのが大半だった中、十返舎一九は静岡から大阪、大阪から東京と、暮らす拠点を何度も変えています。
ちょっと事が上手くいかなくなると旅に出て人生を“初期化”してしまいたくなる若い頃の十返舎一九。腰を落ち着けてその地に根を張っている人たちが羨ましいような気持ちと、その人たちに自分の気持ちはわからないだろうという葛藤。
私自身浮き草のような部分があるため、ちょっとわかるような気がしました。
18歳で故郷を出てから数カ国に暮らして、未だ定住の地を決められない根無し草なので、十返舎一九の寂しさというか「自分はどうしてこうなんだろう」という葛藤がなんとなくわかります。


何百年も前の人物や当時の生活を身近に感じることのできる1冊です。
戯作などの江戸時代の文化や歴史に興味が無くても、小説として十分楽しめる内容なのでぜひ読んで欲しいと思います。
興味がある人はもちろん内容をもっと楽しめるんでしょうね。